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マフィアったーネタファミリーひげもじゃのボス・アビーと幹部・バドはどちらも父親がマフィアです。
父親たちが所属するファミリーはイタリアに本部があり、彼らはアメリカでの仕事を取り仕切る幹部でした。
父親たちは兄弟でイタリア人、アビーの母親はイタリア人、バドの母親はアメリカ人です。そのためアビーの家庭では両親どうしの会話でイタリア語がわりと使われています。

真偽のほどはわかりませんが、父親たちは二人ともファミリーの金を使い込んだとか情報を売ったとかで制裁を加えられ命を落とします。
アビーとバドはイタリアのファミリー本部に連れて行かれ、そこで育つことになります。ファミリーのボスのじじいは異常性癖で少年愛と嗜虐愛をこじらせていました。


というのを前提にした幼少期バドの短文です。すこし暴力表現があります。












少年の身体がぽーんと宙に浮いた。バドは自分の内部で何かが潰れる音を聞いて、落下より前に死ぬ、と思った。死ぬ。腹に食い込んだ男の膝は、どんな棒きれよりずっと固く早かった。背中から床に転げて、痛みに身を縮こまらせる。少年は痛みを知らなかった。当然のことだった。毎日パパが持ってくる小さな飴玉を楽しみにして、学校が終われば同い年の少年たちと駆けて遊ぶ、そんな少年が打撲の痛みなど知るはずがなかった。このまま倒れていよう。噛み付くのも暴れるのももう止めよう。バドは口の端からとろりと血を流しながらそう考えた。きっとはじめからそうしていだだろう、ここにいるのが自分ひとりだったなら。
男の革靴が、音を鳴らして近づいて来た。それをかきけすように高い悲鳴が聞こえた。バドは弾かれるように身を起こし、苦痛に嘔吐きながら両足で立った。ゆっくりとこちらに向かう男に背を向け、反対側に走り出す。アビー、と叫んだ。切れた舌がピリピリと痛んだ。アビーが泣いている。二つ年下の、まだあどけない従兄弟。二人の男に腕を掴まれて、怯えて、泣いている。
「アビー!」
女の子のようだった。薄いむらさきいろの髪は柔らかく癖があって、ふっくらとした頬にちいさなえくぼを作って笑う子だった。それが泣いている。目をきつく瞑って何度も首を振り、大人たちの大きな手のひらから小さな体を離そうと暴れている。触るな、バドは叫んだ。触るな。精一杯に腕を伸ばしてアビーに向ける。駆ける足首を何かが払い、そのままバドは転倒する。顔を上げるより早く髪をつかまれ、バドはのけぞるように身を引き上げられる。頭上から落ちる異国語。聞き取れはしないけれど、それがイタリア語であることはわかった。パパの仕事仲間の言葉だった。アビーの母親もイタリア人だ。男たちが早口に言葉を交わすたび、アビーの泣き声が静かになった。男を、バドを、バドの血がぽつぽつと落ちた床を見て、アビーは握っていた手をゆるりと開いた。
「アビー」
聞き取れるんだと、バドは思った。アビーは言葉がわかるのだ。それがなんの助けにもならないことはわかっていたけど、少年は何かを期待した。逃げたい。ここから、ふたり揃って。アビーがぱちぱちと瞬きをすると、睫毛にとまっていた涙がパラパラ落ちた。そしてそこにまた、新しい涙の粒がひっついた。知らない言葉はしばらく続き、そしてやがてゆっくりとした口調に変わっていった。言い聞かせるような優しい声だった。バドが膝を蹴られるのと同時に、アビーがまた高い悲鳴を上げた。けれど今度は、アビーは逃げようとしなかった。泣き声を、嗚咽をもらして、大人たちの腕に抱かれている。
「止めろ!」
声を上げた、その時に視界がズレた。首の骨がばきっと嫌な音を立てる。斜め後ろに倒れこむ。左頬を殴られたらしく、思い切り歯にぶつかった内頬がカッと熱くなった。拍子で上の歯に食い込んだ舌をひっこめると、どこからかもわからないほどの血が流れだした。唇の上を熱いような冷たいような液体が滑っていく。頭の中で、がらがらと鈴の音がうるさく反響していた。定まらない視点をくるくる回しながら、小さな従兄弟を探した。見つける前に、足首が掴まれた。持ち上げられて、中途半端に下肢が浮く。あっと思ったときには下腹部につま先がめり込んでいた。バドはグッと呻いてその体制のまま嘔吐し、ついでとばかりに体ごと投げられてまた宙に舞った。顔中の穴から脳みそが飛んで行きそうな感覚に襲われて、吐瀉物を鼻からも吹き出しながら、今度こそ死ぬんだと頭の中でつぶやいた。
視界の中にアビーがいた。身につけていたはずのシャツはすでに取り払われていて、剥き出しになった白い肌に太った男が口付けしていた。アビーはこらえようともせずに大声で泣き、体を激しく震わせて、バドに歩み寄る男に何かを叫んでいた。それはバドには理解できず、そして男もそれを聞いているのかいないのか、動きを止めることはなかった。バドはアビー、と二度、三度、小さくこぼして、男に腕を掴まれながらパパ、と呟いた。助けて欲しい。決して触れるなと繰り返したタンスの上から二番目の引き出し、そこにあるものをバドは知っていた。パパ。黒く塗りつぶされた小さな拳銃、それはまだあそこにあるんだろうか。パパ。ふらふらとぐらつく少年の足を男の革靴が踏みつけた。大きくて骨ばって、傷だらけの拳が振り上げられる。パパもこうして死んだんだろうか?バドはすぐにそんな考えを振り払って、わっと眼窩に迫りでた新たな涙をあふれさせた。パパ。引き出しの中に拳銃はない。アビーの悲鳴が裂けた頬に鋭く刺さった。パパ。助けてと声に出す。パパ、パパ、パパ。パパの姿を思い出したのは、今が初めてだった。パパが死んだと聞かされてからは、これが初めてだった。
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某妹
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11/16
自己紹介:
未来からきた世界のゴミ。
胸を張って手を振るぜ。うまれてきてごめんね!
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